抄録
PVC電線被覆材のケミカルリサイクルのための基礎研究として, PVCのN2およびH2O-N2雰囲気下における673~1, 073Kでの熱分解実験を行い, 塩素, 硫黄ならびに鉛の熱分解固体残渣への残留挙動を検討した。
その結果, CaCO3を含有するPVC試料では, N2雰囲気下では塩素, 硫黄, 鉛は主にCaCl2, CaSO4, Pbの化合物形態で固体残渣中に残留した。一方, CaCO3を含有しないPVC試料では, 熱分解で生成する塩素, 硫黄は高温ほど固体残渣からガス側へ移行した。固体残渣中の鉛は低温ではPbCl2として残留し, 873K以上ではPbCl2は揮発した。
H2O-N2雰囲気下では, いずれのPVC試料についても固体残渣中の塩素の残留率は高温ほど減少した。硫黄の残留率はほとんど変化しなかった。鉛はPbCl2がPbに還元され, 高温ほど固体残渣への残留率は増加した。