抄録
カルシウムスケール生成におよぼす焼却残渣の影響を知るため, 15カ所の最終処分場におけるスケールの生成状況と各処分場に搬入されている焼却残渣 (焼却灰, 飛灰および処理飛灰) 37試料についてカルシウムの溶出特性とアルカリ成分量を調べた。液固比10の溶出試験では水酸化カルシウムおよび硫酸カルシウム等の溶解度の影響を受けるため, 溶出可能なカルシウムの全量を求めるには液固比200以上による溶出試験が必要であることがわかった。カルシウムの含有量と溶出量, および酸の中和滴定量から求めたアルカリ成分量の結果から, 水酸化カルシウムを噴霧した飛灰のカルシウム溶出量とアルカリ成分量はともに非常に多いことがわかった。この種の飛灰はスケールの生成に最も関与する焼却残渣であり, スケールが生成している5カ所の処分場のうち3カ所までは排ガス処理として水酸化カルシウムを噴霧した飛灰が処分されていた。また, 未燃分の少ない焼却灰もカルシウム溶出量とアルカリ成分量が多く, スケールが生成していた2カ所の処分場では焼却灰がスケール生成の主要因と考えられた。