組織培養研究
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総説
遺伝子導入技術を利用した幹細胞の分化誘導法
田代 克久稲村 充川端 健二水口 裕之
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2009 年 28 巻 2+3+4 号 p. 135-143

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抄録

多分化能及び自己複製能を有している胚性幹(ES)細胞や人工多能性幹(iPS)細胞を医療へ応用するには、両細胞を目的の細胞に選択的に分化誘導する技術の確立が必須である。そこで我々は、アデノウイルス(Ad)ベクターを用いた分化関連遺伝子の導入による分化誘導法の確立を試みた。マウス ES、iPS 細胞への効率的な遺伝子導入法の確立を行ったところ、CMV エンハンサーと β-アクチンプロモーターのハイブリッドプロモーターである CA プロモーターを有する Ad ベクターが高効率遺伝子導入に適していた。そこでこのベクターを用いて、脂肪細胞または骨芽細胞への分化に必須の PPARγ 遺伝子、Runx2 遺伝子をマウス ES 細胞、iPS 細胞に導入したところ、液性因子のみを使用する従来の分化誘導法と比較し、極めて効率良く脂肪細胞、骨芽細胞へ分化させることに成功した。このように Ad ベクターを用いた遺伝子導入技術は幹細胞の分化制御に有用であり、今後、医療への応用等が期待される。

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© 2009 日本組織培養学会
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