2013 年 32 巻 1 号 p. 189-194
コーヒー酸(3, 4-dihydroxycinnamic acid)は、植物界に広く分布するフェニルプロパノイドの一種であり、抗酸化作用を持つことが知られている。また、皮膚細胞では、紫外線障害に対する保護作用を有することが報告されている。本研究では、コーヒー酸における正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)並びに正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)の増殖または分化に対する効果を検討した。表皮角化細胞において、0.5~5 μMのコーヒー酸添加で、細胞の増殖が有意に促進した。一方、皮膚線維芽細胞に対しては、コーヒー酸における増殖促進活性は見られなかった。低濃度(0.05 μM)のコーヒー酸添加により、表皮角化細胞の分化マーカータンパク質として知られる、ケラチン10及びプロフィラグリンmRNAの強い発現が観察された。これらの結果より、コーヒー酸はヒト皮膚由来表皮角化細胞の新陳代謝能を促進させる作用を持つことが示された。