抄録
膵移植は膵臓移植と膵島移植に分類される。インスリン依存型糖尿病に膵臓移植がはじめて施行されてから、25年が経過した。この間、外分泌腺の処理法の確立、保存液の改良、免疫抑制剤の開発などにより、移植成績は向上した。1989年の国際登録機構によれば、受容者の1年生存率90%、移植膵の1年生着率80%であり、治療の一選択となっている。日本においても1990年以来4例の報告があり、いずれもインスリン注射より離脱している。一方、膵島移植は、実験動物では同種および異種移植が成功し、数々の利点が挙げられているが、ヒトからの大量単離、収集が困難なこともあり、臨床応用は遅れていた。しかし1990年に入り2つの施設において成功し、臍静脈を経由して門脈内へと移植する手技の簡便さや凍結膵島が利用できることなどのため、むしろ合併症の進行していない糖尿病者への応用が検討されるようになっている。膵移植はインスリン療法という根本的な代償療法がある点、他臓器の移植と必要性を異にしているが、糖尿病者が長期にわたり健常者と同様な日常生活を送るためには、掛け替えのない治療法であろう。