抄録
低線量放射線を受けた細胞には、適応応答が誘導される。その誘導条件を調べるために、ヒト胎児(HE)細胞とHeLa細胞にX線を照射し、放射線感受性の変化と細胞間情報伝達との関係を検討した。その結果HE細胞では、200cGy照射により非照射群の37%に生細胞数が減少するが、200cGy照射の4時間前に10~20cGy照射をすると、生細胞数は45~53%にまで有意に増加した。この適応応答の誘導は、低線量照射から200cGy照射までの時間に依存しており、30分間隔と4時間間隔をピークとする2相性の変化を示した。しかしHeLa細胞では、適応応答は観察されなかった。また、HE細胞をカルシウムイオンを除去した培地中およびTPAを添加した培地中で低線量照射しても、細胞に適応応答は誘導されなかった。以上のことから、細胞の放射線適応応答には細胞間情報伝達が関与しているものと考えられた。