専門日本語教育研究
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留学生の母国でのプレゼンテーション教育に関する調査
カリキュラム開発への基礎研究
福良 直子
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2021 年 23 巻 p. 67-74

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抄録
 本稿では、日本の大学における留学生に対するプレゼンテーション(以下プレゼン)教育のカリキュラム開発に資する基礎研究として、母国でプレゼン教育を受けた経験を持つ、学部の正規留学生3名にインタビュー調査を行った。Ginkel他(2015)による「高等教育におけるプレゼン能力開発の枠組み」をもとに、プレゼンの学習過程や学習成果には、既有の能力・認識や学習環境が相互に影響するものと考え、母国でのプレゼン教育の内容や学び、プレゼンの際の重要点と困難点を調査した。その結果、準備段階で、教員による指導がある場合は、スライドの作成方法、聴衆の関心の引き方、発表内容や構成が重視されていたことがわかった。準備段階での指導がない場合は、プレゼン当日のフィードバックからの学びに加え、経験の蓄積による学びが見られた。一方で、母国での学習には、内容の論理性や資料作成の面で不足点もあった。以上より、日本語による効果的なプレゼン教育には、大学入学前の学びについて学習者に意識化を促し、自身の既有の知識や能力を認識した上で、段階的な学びを促進するカリキュラムの開発が必要であると考えられる。意識化の促進には、フィードバックに加え、質疑応答時の聴衆とのコミュニケーションによる学びが果たす役割も大きい。さらに、プレゼンの経験が豊富な学生のコメント等をリソースとして活用すれば、プレゼンの質の向上に貢献できるものと期待される。
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