抄録
本研究は、日本語教員へのライティング教育支援の示唆を得るための基礎研究として、日本語教員がライティング指導に感じる難しさを定量的に明らかにすることを目的としたものである。アンケート調査では、ライティング指導全般に対する難しさと具体的項目に対する難しさを5件法で尋ね、ライティング指導経験年数5年未満、5年以上10年未満、10年以上の3群に分けて分析した。その結果、(1)ライティング指導全般に関しては指導経験年数5年未満の教員のほうが10年以上の教員より有意に難しいと感じていること、(2)指導経験年数による違いがある項目は難しさの平均値が概ね高くないこと、(3)5年未満、5年以上10年未満、10年以上のそれぞれの段階で難しいと感じる上位項目には共通して、授業外にかかる時間、複眼的思考、論理的思考が含まれていることがわかった。これらの結果から、5年未満の教員に教育支援が必要であること、指導経験年数を問わず「難しい」と感じている項目は継続的な教育支援が必要であることが示唆された。