抄録
本研究では、日本の大学に留学中の中国語母語話者(以下、CNS)が発話で使用する副詞が留学期間によってどのように変化するか分析を行った。具体的には、1万語あたりの使用数、種類、副詞の難易度(旧日本語能力試験の出題級を指標とする)、使用頻度上位語を日本語習熟度の異なる3群の2つの時期で縦断的に比較し、さらに、日本語母語話者(以下、JNS)も含め、横断的に比較した。その結果、第二言語としての日本語(JSL)環境にいるCNSの発話においては、1) 留学後1年半程度で入学時の日本語習熟度にかかわらず、JNSの副詞の使用数に近づくこと、2) 発話において使用される副詞の数・種類に着目した場合、副詞の難易度ごとの使用比は、習熟度が高くなるにつれてJNSに近くなるわけではないこと、3) 使用頻度上位語のJNSとの比較および縦断的分析により、JSL環境にいて習熟度が高く、留学期間が長ければ、CNSが使う副詞には必ずしも教科書の影響が見られるわけではなく、多様な副詞が使えるようになる可能性があることが明らかになった。