The Journal of Toxicological Sciences
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PRULIFLOXACIN (NM441)の老齢犬を用いた経口投与による単回および4週間反復投与毒性試験
伊原 敏夫阿久根 淳中間 和浩千早 豊永田 良一鷲見 信好浅岡 宏康神藤 康弘
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1996 年 21 巻 SupplementI 号 p. 149-169

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抄録

Prulifloxacinの老齢犬における毒性を検討するために,2500および5000 mg/kgの投与量による単回経口投与毒性試験,ならびに,0,20,100および500 mg/kgの投与量による4週間反復経口投与毒性試験を実施し,以下の結果を得た。I. 単回投与毒性試験: 1. 観察期間中に死亡はみられなかった。嘔吐が2500 mg/kg投与群の2例中1例および5000 mg/kg投与群の2例で投与日の投与3~4時間後にみられた。5000 mg/kg投与群では投与翌日にも2例で嘔吐が観察され,うち1例では軟便もみられた。その後の観察期間ではいずれの動物にも異常はみられなかった。2. 体重,摂餌量および摂水量の推移ならびに病理学的検査では被験物質投与に起因する変化はみられなかった。以上の結果から,本試験条件下でのprulifloxacinの雌老齢犬における致死量は5000 mg/kg以上と判断した。II. 反復投与毒性試験: 1. 一般状態の観察では,500 mg/kg投与群の雌雄で嘔吐が投与期間を通して毎日あるいは断続的に,また流涎が主に投与6日目から投与期間終了時までほぼ毎日みられた。体重および摂水量の減少,摂餌量の減少あるいは無摂餌が500 mg/kg投与群の雌雄で認められた。体重および摂餌量の軽度な減少は,100 mg/kg投与群の雌にもみられた。いずれの投与群にも死亡はみられなかった。2. 眼科学的検査および心電図検査では,被験物質投与の影響は認められなかった。3. 尿検査では500 mg/kg投与群の雌雄でNa+,K+およびCl-の濃度ならびに排泄量の減少が認められ,雄では尿比重の低下がみられた。4. 血液学的検査では,500 mg/kg投与群の雌雄でWBCの減少が認められた。5. 血液化学的検査では,500 mg/kg投与群の雌雄でGPT,BUN,クレアチニンの上昇,雄でGOTの上昇,雌でCl-の減少がみられた。GPTの上昇は100 mg/kg投与群の雌雄にも認められた。6. 病理学的検査では,500 mg/kg投与群の雌雄で腎表面の粗造がみられ,慢性間質性腎炎を示唆する所見(尿細管上皮の好塩基性化,間質の線維化巣,尿細管の萎縮,間質における単核細胞の浸潤および尿細管基底膜の肥厚)が対照群に比較し増強して認められた。以上のごとく,20 mg/kg投与群ではprulifloxacin投与による変化は何も認められず,今回の試験で得られた無毒性量は20 mg/kgであった。

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