The Journal of Toxicological Sciences
Online ISSN : 1880-3989
Print ISSN : 0388-1350
ISSN-L : 0388-1350
新規抗悪性腫瘍薬S-1の生殖・発生毒性試験 (第2報) : ラット経口投与による胎児の器官形成期投与試験
柚木山 史郎四宮 充普池渕 一也佐藤 利和
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 21 巻 SupplementIII 号 p. 603-618

詳細
抄録

FT,CDHPおよびOxoをモル比1:0.4:1で含有するS-1の0,1,3,5および7 mg/kg/dayを,ラット胎児の器官形成期にあたる妊娠7日から17日までの11日間毎日強制経口投与し,母獣,胎児および出生児に及ぼす影響を検討した。F0母獣に対する影響として,7 mg/kg/day群で投与期間中に体重増加抑制および摂餌量の有意な低値が認められた。F1胎児に対する影響として,7 mg/kg/day群で胚・胎児死亡数の高値傾向に伴う生存胎児数の低値傾向が認められた。5 mg/kg/day以上の群で生存胎児体重が有意に低下した。F1胎児に外表異常および骨格異常の増加は認められなかったが,7 mg/kg/day群で内臓異常として水頭症の発生頻度がやや高く,合計の内臓異常数が増加した。また, 5 mg/kg/day以上の群で内臓変異の増加傾向および7 mg/kg/day群で骨格変異の増加が認められた。F1出生児に対する影響として,7 mg/kg/day群で水頭症が増加した。また,7 mg/kg/day群で体重増加が抑制傾向で推移し,出生率も低下傾向を示した。しかし,生後の機能発達,情動,学習能力および生殖能カへの影響は認められず,F2出生児に対する影響も認められなかった。以上の結果より,本試験条件下におけるS-1のF0母獣に対する一般毒性学的無影響量は5 mg/kg/day,生殖に対する無影響量は7 mg/kg/dayを上回ると推察された。次世代の発生に対する無影響量は3 mg/kg/dayであると考えられた。

著者関連情報
© 日本トキシコロジー学会
前の記事 次の記事
feedback
Top