抄録
著者らは, イヌにおける全身麻酔下の脱血が血液ガスならびに酸塩基平衡にいかなる影響を及ぼすかについて検討した。麻酔はペソトバルビタールナトリウム (20~25mg/kg) 静注麻酔およびクロルプロマジソ前処置 (2mg/kg) 後の塩酸ケタミソ筋注麻酔で, 麻酔後各々体重の1%, 2%および3%を股動脈から3~5分間で急速.に脱血させた。その結果得られた成績は次のとおりである。
1.ペントバルビタール麻酔下の脱血では対照群とほぼ同様の傾向が見られた。すなわちpHの低下, PCO2, の上昇, PO2の下降, HCO3-, B.E.は著変なく呼吸性Acidosisの様相を呈した。又脱血量の多少による差については明らかでなかった。
2.塩酸ケタミン麻酔 (クロルプロマジン前処置) 下の脱血では, 対照群と比してpHの不変または低下, PCO2の下降, PO2の上昇, HCO3-噂, B.E.の減少が見られ, 呼吸性Alkalosisと代謝性Acidosisの混合型を示したものであり, 体重の2%脱血例では後者の傾向が強く, 3%脱血例でも同じ傾向であるが, 代謝性Acidosis, がより強められた所見であった。
3.塩酸ケタミソ麻酔はペソトバルビタール麻酔に比.して, 生体の反応 (脱血の変化) を素直に表わした。