2017 年 1 巻 1 号 p. 10-14
本研究では、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬を投与された犬におけるイソフルラン麻酔中の血行動態を評価し、ACE 阻害薬と麻酔による低血圧に対する手段を検討することを目的とした。健常犬 7 頭及び軽度な僧帽弁逆流症犬 7 頭に対し、プラセボまたはエナラプリル 0.5 mg/kg を経口投与した。ACE 阻害薬投与群における麻酔開始 40 分後の収縮期動脈血圧はプラセボ群と比べ低値を示した(プラセボ群 -34.8 ± 14%;ACE 阻害薬投与群 -49.1 ± 9%, mean ± SD)。ACE 阻害薬投与下のイソフルラン麻酔で生じた低血圧に対しドパミン及びドブタミンの投与を行ったところ、どちらも血圧を約 20%回復させた。ドブタミンはドパミンと比べ、全身血管抵抗を増加させなかった。本研究により、ACE 阻害薬の投与後の全身麻酔時に血圧低下が誘発される可能性が示され、その対処としてドブタミンがより適していることが示唆された。