羊化牛痘(Ovinisierte Vakzine)ニ就テ
1927 年 6 巻 2 号 p. 137-161
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1927 年 6 巻 2 号 p. 137-161
(1) 牛化天然痘毒(Variola-Vakzine)ヲ緬羊ノ皮膚面ニ接種スルトキハ恰モ犢ノ皮膚ニ生シタル牛痘疱ト家兎ノ剃毛皮膚面ニ生シタルソレトノ中間ニ比スベキ痘疱ヲ生ス
(2) 爾後緬羊ヨリ緬羊ニ傳繼ヲ試ミシニ第8代迄ハ略ホ第1項ノ如キ發痘状況ヲ維持スルモ次テ急ニ毒性減弱シ第9代ニ至リテハ最早痘疱ヲ形成セズ一種落屑性ノ皮膚炎ヲ發スルニ止マリ14代迄同樣ニシテ爾後再ビ毒力漸次高マリ第23代ニ至リテ最高度ニ達シ次テ最後マデ(38代迄實驗セリ)依然タリ以下説明ニ便セシガ爲メ第1乃至第8代ヲ羊化第1期,第9乃至22代ヲ同第2期,第23代以後ヲ同第3期ト唱フ
(3) 以上ノ實驗ニ用ヒタル54頭ノ緬羊中一トシテPissin,Fürstenberg等ガ目撃シタリト稱スル全身發疹,重篤ナル全身障碍及ビ斃死例ヲ見タルコトナシ但シ何レモ高度ノ體温上昇ヲ伴フ
(4) 各代ノ羊化牛痘苗ヲ原乳劑ノママ稀釋セスシテ犢ノ皮膚ニ線種スルニ第8代迄(即チ羊化第1期)ハ常ニ正形痘疱ヲ生スルモ第9代以後漸次痘疱ノ形状不正トナリ第11代以後ニ於テハ毫モ發痘セズ羊化第3期即チ緬羊ニ對シ最高毒力ヲ呈スル時期ニ於テモ亦然リ即チ牛痘毒ガ羊體ニ對シ完全ニ馴化スルト共ニ牛ニ對スル毒力ハ全ク消失ス
(5) 各代ノ羊化牛痘苗ヲ500倍ニ稀釋シテ家兎ノ剃毛部ニ塗布接種スルニ第8代迄ハ痘疱密生又ハ殆ンド密生スルモ之ヨリ羊體通過ヲ重ヌルニ從テ發痘漸次疎トナリ緬羊ニ對スル毒力ガ最高ニ達スルノ時期ニ至レバ終ニ眞ノ痘疱ヲ形成セス接種部ハ單ニ潮紅スルノミ即チ羊體通過ニ由リ牛痘毒ガ緬羊ニ對シ完全ニ馴化スルト共ニ家兎ニ對スル毒力ハ殆ンド全ク消失ス
(6) 第20代羊化牛痘ヲ2人ノ初種痘兒ニ普通牛痘ト共ニ接種セシニ後者ノ接種部ニハ美麗ナル痘疱ヲ形成セシニ抱ラス前者ノ接種部ニハ何等ノ反應ヲ呈セス即チ羊化牛痘ハ人ニ對シテモ亦無毒トナル
(7) 羊體通過初期ノ牛痘毒ハ普通牛痘毒ニ對スル免疫元性ヲ有シ羊化牛痘毒ニ對スル免疫元性ヲ保持セサルモ羊體通過ノ進ムニ隨テ普通牛痘毒ニ對スル免疫元性ハ漸次減弱シ羊化牛痘ニ對スル免疫元性顯ハレ來リ而シテ牛痘毒ガ完全ニ羊體ニ順化スルニ至レバ普通牛痘毒ニ對スル免疫元性ハ全ク消失シ之レニ反シテ羊化牛痘毒ニ對スル免疫元性完成ス
(6) 完全ニ羊體ニ順化セル牛痘毒ハ羊痘毒ニ對シ可ナリ高度ノ免疫性ヲ賦與ス然レ共之レヲ羊痘ノ豫防接種ニ應用スルニハ其防禦力尚ホ充分ナラズ
(9) 羊痘耐過羊ハ普通牛痘ニ對スル免疫性ヲ有セザルモ羊化牛痘ニ對シテハ完全ナル免疫性ヲ有スサレバ羊化牛痘ハ其性質普通牛痘ヨリモ遙ニ羊痘毒ニ近似ス
