抄録
1. 農林省動物医薬品検査所および国立予防衛生研究所で保管されている, 日本脳炎ウイルス中山株(それぞれ薬検-および予研-中山株とよぶ)を用いて行なった交差感染防御試験では, homo の場合が, hetero の場合より高い防御能を示し, 両ウイルス株間の防御能には差が認められた. その差は, 免疫程度が高いものほど顕著であった. 2. 両ウイルス株の免疫過程における各時期の血清について行なった交差中和試験においても, 両ウイルス株間の中和指数に差が認められた. 3. 両ウイルス株とも, 血球凝集反応の至適pHは6.4にあった. 両ウイルス株の免疫過程の各時期の血清について行なった交差血球凝集抑制反応においても, 抑制価はほとんど等しく, 消長も同一の傾向を示し, 両ウイルス株間に差が認められなかった. 4. 両ウイルス株の抗血清の交差補体結合反応では, 差が認められなかった. 5. 硫酸プロタミンによる沈降試験およびデゾキシコール酸による抵抗試験では, 両ウイルス株とも, プロタミンによる感染価の低下はなく, デゾキシコール酸によって感染価は低下し, 差は認められなかった. 6. 両ウイルス株ワクチンと, 流行時に患者から分離されたウイルス株とを用いて行なった感染防御試験では, 両ウイルス株の感染防御能に差がなかった. 終わりにのぞみ, 終始懇篤な指導および本稿の校閲を賜わった川島秀雄所長に深甚な謝意を表する. ウイルス株を分与され, 種々教示をいただいた国立予防衛生研究所大谷明博士, 緒方隆幸博士に謝意を表する. 本報告の大要は, 第49回日本獣医学会に発表した.