日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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豚の伝染性萎縮性鼻炎の病原学的研究 : VI. Bordetella bronchiseptica の鼻腔内定着に対する死菌免疫の効果
輿水 馨児玉 義勝尾形 学木野 津南夫三百田 聡視三村 二雄
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1973 年 35 巻 5 号 p. 411-418

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抄録
豚の伝染性萎縮性鼻炎の主要な病原体と考えられるBordetellabronchisePticaの鼻腔内定着に対する死菌免疫の効果について検討した.免疫原はB,bronchisePticaI相菌の10%馬血液加トリプトソイ寒天培地培養菌を燐酸緩衝食塩液に浮遊し,チメロサールを1:5,000に加え,約2週間氷室に保存して菌を不活化した.接種時にFreund′sincompleteadjuvantを等量加え,混合乳剤として豚(Convcntional)の皮下に接種した.成績を要約すると,次のとおりである.1.生後約15週齢のB.bronchisePtica自然感染豚(ランドレース・ハンプシャー交雑)9頭のうち,6頭を免疫群,残りの3頭を非免疫の対照群とした.免疫群に対しては,1週間隔で2回,免疫原5mlおよび10mlを接種し,このうち3頭には,さらに3週後20mlを追加接種した,免疫群のB.bronchisePticaに対する血中凝集抗体(AG)価は,10,000~80,000倍に上昇したが,10週間の実、験期間中,鼻腔内のB.bronchisePticaは有意の減少を示さなかった.2.妊娠母豚4頭(ランドレースおよび大ヨークシャー)のうち2頭に,分娩前約40日の時点で20mlを,さらに1週後に30mlの免疫原を接種し,残りの2頭は非免疫の対照とした.出産時,免疫母豚のAG価は10,000倍を示した.出産後,初乳を与えた子豚計22頭のうち,免疫母豚から生まれた子豚では,5,000~10,000倍の移行抗体が検出された.これに対し,対照非免疫母豚から生まれた子豚の抗体価は,10倍またはそれ以下であった.生後1週目に,すべての豚に対し,B.bronchisePticaブイヨン培養生菌105/0.2mの10倍段階希釈菌液により,鼻腔内攻撃を行なった.対照群では全例B.bronchisePticaが鼻腔内に定着した.免疫群の子豚16頭のうち9頭では,10270.2ml以下の菌量で攻撃後,菌の定着が認められなかった.3.同じ実験をくりかえしたところ,免疫群の子豚は,101~10570.2mlの本菌攻撃に対し,少なくも4週齢以内では,全例菌の定着が認められなかった.以上の成績から,B.bronchisePticaの死菌抗原を用いて,妊娠母豚に高度の免疫を与えて置くことによって,その子豚の鼻腔内における本菌の初期定着を阻止できる可能性が示唆された.
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© 社団法人 日本獣医学会
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