日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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乳牛におけるMg, Caおよび無機燐代謝に及ぼす年齢, 泌乳ならびに季節の影響
志賀 瓏郎阿部 和司浜本 修一慶野 昌明塚本 健司藤尾 修
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1985 年 47 巻 2 号 p. 275-283

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抄録

岩手県県北地方に多発する乳牛のミネラル代謝障害の原因究明のため, 一農場において, 1-10歳のホルスタイン種乳牛21頭(成牛17頭, 新生子牛4頭)を用い, 6月から12月まで計9回, 一定時刻(13:00~15:00)に採血, 採尿して, 血清および尿中Mg, Ca, 無機燐(Pi)濃度を測定し, Mg, CaおよびPi代謝に及ぼす年齢, 泌乳ならびに季節の影響を調べ, つぎの成績を得た. 1) 泌乳中の老齢(6-10歳)群では, 血清Mg濃度が若齢(2-5歳)群のそれより常に低く, 6月および10月に著明な低Mg血症が認められた. 血清および尿のMg濃度の間には年齢別, 季節別お上び泌乳の有無に有意の指数函数関係が成立した. 2) 泌乳しない老齢群以外では, 血清Pi濃度は, 温暖期(6-8月)に比べ寒冷期(10-12月)に有意に低かった. 3) 多くの個体で尿中CaおよびPi濃度(mmol/クレアチニンmmol)は, それぞれ一定の範囲(Ca:0.10mmolおよびPi:0.10mmol/クレアチニンmmol)内にあったが, 泌乳老齢群には, 尿中Ca濃度のみが0.10mmolを超える個体が多かった. また, 分娩直後の個体では, 尿中CaまたはPi濃度のどちらかが著明に高かった. 4) 泌乳しない若齢群および泌乳老齢群では血清のMg 濃度とCa濃度との間に有意の正の相関が, 泌乳若齢群では血清のCa濃度とPi濃度との間に負の相関が認められた. 5) 腎臓機能低下を示す老齢泌乳牛では, 日内温度差の大きい時期に尿中Mg排泄率が高まるために, 低Mg血症になりやすいと考えられた.

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