1985 年 47 巻 6 号 p. 921-929
放牧牛のTheileria sergenti感染による小型ピロプラズマ症の軽減あるいは予防を目的としてトキソプラズマ溶解抗原(TLA)投与による免疫賦与効果を検討した. 放牧経験のない6~13ヵ月齢のホルスタイン種雌牛6頭にそれぞれTLA1,000μgを2~3回投与し, 初回投与後7週に小型ピロプラズマ媒介ダニ汚染牧野に放牧, 放牧後9週まで観察した. 放牧後のTLA投与群および対照群の赤血球数最低値は, それぞれ649×104/μlおよび229×104/μlであった. 最高原虫寄生率は, TLA投与群では2.6%(平均値0.6%), 対照群では10%(平均値3.2%)を示した. 6例中5例では, TLA1回投与後にTLAに対する間接血球凝集(IHA)抗体価は1:6以上を示した. TLA非投与牛においても放牧後にはIHA抗体価が上昇した. 一方, T.sergentiに対する補体結合抗体価および蛍光抗体法による抗体価は, TLA3回投与群の1例と非投与対照牛で放牧後1~5週に検出された. いずれの牛にもB.ovataおよびA.centraleに対する抗体は認められなかった.