日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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牛の分離第一胃・二胃における水分, 電解質ならびにVFAの吸収に対する浸透圧の影響
田原 秀樹池田 賢角田 映二村上 佳文山田 裕佐々木 伸雄竹内 啓
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1990 年 52 巻 1 号 p. 91-96

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抄録

成牛に対する経口輸液療法の可能性を探索するため, 正常牛の分離第一胃・二胃からの水分, 電解質およびVFAの吸収に及ほす第一胃内浸透圧の影響について検討した. 分離第一・二胃内に種々の濃度の電解質やVFAを含み浸透圧が100~500mosmol/lの4種の試験液を30ないし40l注入し, 3時間後に回収して各成分の吸収率を求めた. その結果, 水分は低張である程よく吸収され, 100mosmol/lの場合では3時間あたり46.7%, 200mosmol/lで27.0%, 300mosmol/lで8.2%がそれぞれ吸収されたが, 血液より高張の500mosmol/lの試験液では, 22.9%が第一胃内に逆吸収された. Na, K. C1に関しては, 試験液の浸透圧や各電解質濃度が上昇するに伴って, それらの吸収率も増大する傾向にあった. また, VFAは従来の報告のように相当量(23.9~74.5%/3時間)が吸収されたが, その吸収率は試験液が高張なほど有意に低下した. 以上の結果から, 正常牛の第一胃・二胃は水分や電解質ならびにVFAに対してかなりの吸収能を有するが, それらは第一胃内浸透圧により多大の影響を受けることが判明した. そして, この第一胃壁の吸収特性に関して十分な考慮を払うならば, その能力は成牛の経口輸液経路としての役割を十分に果たし得ることが強く示唆された.

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