抄録
IBSD法を用い, Si基板上にFe蒸着時の基板温度および蒸着量を変化させて, エピタキシャル成長したβ-FeSi2薄膜の作製を試みた.これらの結果から, 本法においては基板温度700℃, Fe蒸着量33nmにおいて最も良好なβ-FeSi2が得られることを明らかにした.一方, XRDスペクトルの結果から得られたβ-FeSi2の一部にはエピタキシャル性のない微結晶を含むことも同時に明らかとなった.またSEM像の結果から, 700℃付近以上の温度では生成したβ-FeSi2が急激に凝集する傾向も見られた.
さらに, 蒸着量を変化させることにより同じ成膜温度では蒸着量が少ないほどα相が生成しやすいことも見いだした.これらの結果から, 本法においては基板温度だけでなく反応界面でのFe : Si組成比の制御も極めて重要であることがわかった.同時に本実験ではFe蒸着量によってはβ相よりも高温で生成するα相が基板温度700℃でも明らかに確認された.これはより低温でβ相のエピタキシャル成長が可能であることを示唆するものと考えられる.