山階鳥類研究所研究報告
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北海道におけるクロジの営巣初記録
藤巻 裕蔵樋川 宗雄
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1978 年 10 巻 1-2 号 p. 172-177

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抄録

旭川市東旭川町瑞穂で森林性鳥類の調査法の研究中にクロジの営巣を確認した。調査地は標高500m,面積140haほどの針広混交の天然林中に設けられた23haの区画である。ここではエゾマツ,トドマツの針葉樹が40%,シナ,カツラ,イタヤ,オヒョウなどの広葉樹が60%を占める。調査地の中央を流れる沢を境に南側では林床植物がシダ類,ヤマアジサイなどでそれほど密ではないが,北側ではクマイザサが密生している部分が多い。
クロジは調査地内で2~4つがいで生息し,主として北側のクマイザサの密生地にいた。このうち一つがいの巣を1976年7月8日に確認した。巣は高さ130cmのトドマツの幼木上部,地上90cmのところにあり,巣内には4卵があった。その後7月20日に巣内に巣立ちまじかのひなを見たが,翌日にはひなは巣立っていた。
このほか調査地内で7月6日に雄1羽と幼鳥3羽の群が観察された。
北海道でクロジは,春と秋の渡り時期に平地の森林で見られる。繁殖期には北海道南部以外の地方では標高200~1300mの主として針広混交林でかなり普通に見られる。

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