山階鳥類研究所研究報告
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非同時孵化したコサギの同腹ヒナ間における生残の違い
井上 良和
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1981 年 13 巻 2 号 p. 120-135

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抄録

1.非同時孵化をするコサギの同腹ヒナ間の生長•生残の違いを,1976年に奈良県で,1977年に三重県で調査した。それらの違いが生じる原因を親の給餌行動とヒナの摂食行動から分析した。
2.1976年には1巣について2日間,1977年には12巣について48日間,巣を中心とした終日の親とヒナの行動観察を行った。
3.ヒナの生長速度は,第1~3子ではほぼ同じであったが,第4子ではやや低く,第5子ではさらに低かった。
4.生残率は,第1子が最も高く,孵化順が遅くなるにつれて低くなった。
5.給餌は雌雄とも行い,1回の巣内滞在中(平均175.4分,64~334分;第1子の日齢が10日まで)に平均7.3回(2~16回)に分けて行った。
6.ヒナの摂食行動は,巣の上に吐き出された食物をつついて摂食する方法から,わずか1,2日間に,親の嘴から直接食物を受けとる方法へ移行する。したがって,早く孵化したヒナが最も早く口移しによる摂食法を行うようになる。
7.2羽のヒナが同時に餌乞い行動をした場合,早く孵化したヒナの方が先に餌を取る傾向が見られた。親の食物供給に余裕のある場合のみに,孵化順の早いヒナの食欲が満たされた後に,孵化順の遅いヒナも無競争で餌を得た。
8.これらの行動観察の結果は,「鳥類の非同時孵化は親の食物供給量に見合ったヒナ数にする適応である」というLackの提唱(1947,1954)を支持する。

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