1991 年 22 巻 1 号 p. 70-76
1986年,北京動物園にトキ増殖センターが設けられ,現在5羽のトキが飼育されている。それらは幼鳥時に中国陜西省洋県で野外から捕えられたものである。このうちの1985年生れの雌と1986年生れの雄を,繁殖のため同一ケージに収容した。1989年6月13日と15日に計2卵が産卵された。そして7月8日の朝1卵が孵化したが,親鳥につつかれて死亡した。ニワトリの仮母に託されていたもう1卵は,7月10日に孵化したが,残念ながら6日後に死亡した。トキの抱卵日数は文献によると28-30日とされているが,今回は25日であった。本例は飼育下におけるトキの初繁殖成功記録である。