抄録
成熟雄ギンバシに,さまざまな用量(0.5μg,10μgそして20μg/100g体重)の有機リン系殺虫剤quinalphosを経口投与して,投与後1日目,5日目,10日目に精巣の薬剤反応性を,対照群のものと比較して調べた。薬剤投与5日後と40日後共に,精巣重量と細精管内の正常な生殖細胞数の有意な減少が認められた。薬剤摂取群では,さらに精巣内に多くの退化生殖細胞が検出されたが,他の形態的変化は認あられなかった。精巣内のアセチルコリン•エステラーゼの活性は,薬剤投与量と投与期間に依存して減少した。アセチルコリン•エステラーゼ活性の減少と退化生殖細胞の比率増加の間には有意な相関関係があった。しかし,薬剤による効果はライディヒ細胞では確認されなかった。
以上の結果は,有機リン系殺虫剤quinalphosの経口摂取は野生ギンバシ精巣の配偶子形成を薬理的に阻害することを示す。