2001 年 33 巻 1 号 p. 15-24
オオハシモズ科鳥類は,マダガスカル島内で著しく適応放散した単系統種群である。これまでオオハシモズ科鳥類の採食生態や系統関係については研究が行われているが,各種の基本的な繁殖生態についてはほとんどわかっていない。本論文ではオオハシモズ科鳥類の一種シロノドオオハシモズの繁殖生態を記載し,その配偶様式を考察した。調査は2000年の10月から11月にかけて,マダガスカル北西部の落葉乾燥林アンカラファンチカ厳正保護区内アンピジュルア研究林において行った。調査地では声のみが聞かれた1番いを含む6番いのシロノドオオハシモズが確認された。各番いは分散した行動圏を所有しており,各行動圏は互いに接しておらず,番い間の干渉は観察されなかった。巣が発見された3番いについて,造巣,抱卵,育雛行動を観察したが,いずれの行動も雌雄が分担して行っていた。繁殖活動を手伝うヘルパー個体は観察されなかった。これら分散した行動圏を持つことと雌雄2個体が卵および雛の世話を行うことから,シロノドオオハシモズの配偶様式は一夫一妻であると考えられた。