山階鳥類研究所研究報告
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小櫃川河口干潟におけるシロチドリCharadrius alexandrinusの個体数の季節変動と餌内容
吉安 京子尾崎 清明
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2002 年 34 巻 1 号 p. 126-135

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抄録

1975年1月~1976年2月と1976年8月~1977年1月に小櫃川前浜干潟においてシロチドリの採餌生態を解明するために,個体数調査,行動観察,糞の分析,底生動物から検討を加えた。個体数の季節変動をみると1~2月と7月中旬~9月中旬に2回のピークが見られ,後者は期間•個体数ともに前者より大きかった。また,12月には大きな個体数の出入りはなかったと推察される。1975~1976年と1976~1977年を比較してもほぼ同様の傾向が見られた。行動観察からは昼間の干潮時において採餌に費やす時間の割合が,調査期間を通じて平均86.4%であり,12月中旬以降にはさらに採餌の割合が増加し,それに対応して主に休息の割合が減った。この事から本種は本調査地では主に採餌に費やしていることが示唆された。カニ類の割合は直接観察と糞の分析では39.8~66.3%であるのに対して底生動物では7.2~10.8%であり,ゴカイ類の割合は13.3~68.9%に対して64.8~85.8%となった。このことはシロチドリがカニ類を選択して採餌していることを示唆している。もしくはシロチドリは泥表面上の餌を採るため,餌動物の泥表面上での活動状況を反映しているとも考えられる。また,カニ類の内コメツキガニの割合は直接観察,糞の分析,底生動物のいずれも88%以上を占め,調査期間中シロチドリは餌動物として主にコメツキガニとゴカイ類を餌として食べていたと考えられる。

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