山階鳥類研究所研究報告
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日本におけるカラ類群集構造の研究
I.種構成,個体数の季節的変動および生態的分離
中村 登流
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1967 年 5 巻 2 号 p. 138-158

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抄録
本州中部山麓地地域における同所性カラ類(Aegithalinae,Parinae)の生態的分離について述べた。特にこの第一報では各種の個体数と種構成の季節的変動について分析した。
共存カラ類の主要メンバーは生活地域末端部ではエナガとシジュウカラであり,もっと複雑な植物相のもとではヒガラが加わり,少数メンバーとしてヤマガラ,コガラが存在する。エナガとシジュウカラは繁殖期の主要なメンバーであり,ヒガラが加わるのは越冬期のみである。
カラ類の共存状態は次のように分けられる。
1.同数で共存するが社会的,季節的変動の型を全く違えている:エナガは新生個体群を集中させ,シジュウカラは分散させる。
2.同数で共存するが季節的変動の型を量的に極端に違える:シジュウカラとヒガラはほぼ同じ型の季節的変動を持っているが,ヒガラは繁殖期に著るしく個体数を減し,一方越冬期には極端に増大する。
3.同数共存をしないで一方が優勢量を持っている:シジュウカラに対してコガラとヤマガラはシジュウカラとほぼ同じ型の個体数季節変動を示しながら調査地域内の個体数を甚しく縮小している。
同所性の程度はシジュウカラとエナガの間で最も良く保持されやすく,このようなメンバーに対してヒガラはむしろ入りにくくなり,コガラ,ヤマガラではヒガラよりもっと入りにくくなる傾向があり同所性の程度は低い。本州中部山麓に関する限り,ヒガラはシジュウカラ,エナガに対して時期的(繁殖期)にはっきりした異所性を示し,コガラ,ヤマガラは環境的に異所性である。北海道ではハシブトガラは湿性地,ヒガラは針葉樹林地帯に明確な異所性を示す。
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