山階鳥類研究所研究報告
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キジバトの生活史に関する研究
1.繁殖生活
羽田 健三野沢 進之輔
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1969 年 5 巻 5 号 p. 473-486

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抄録

1.長野県長野市信州大学教育学部構内で1967年に,キジバト(Streptopelia orientalis orientalis)の繁殖生活を観察した。
2.巣造り期間は2~4日。♂は枯枝を嘴で折ったり,地上から拾ったりして巣材運搬のみに従事し,♀は巣場所でそれを受けとり,小枝を組み合わせて巣を造る。
3.卵数は4巣において2卵で,1巣のみ1卵であった。抱卵は1卵産卵後から行ない,♀と♂が朝方と夕方2回交代し,♀は夕方から夜間を経て朝方まで平均17時間,♂は昼間の平均7時間続けてだく。抱卵日数は15~16日間であった。
4.給餌は♀,♂とも行ない,親の口の中へ雛が嘴を入れ,親は首を上下にふりながら液状の餌を戻して口うつしをする。抱卵は育雛前,中期まで抱卵タイプでの♀♂交代が続き,抱雛しながら夫々の親が給餌する。このため前,中期ほど給餌回数が多く14~19回となり,後期は給餌だけに巣を訪れ1日3~4回である。巣立ちはふ化日から15~17日間である。
5.次の繁殖は同じナワバリ内で巣場所をかえて行ない,抱卵期に入ると♂だけが前巣の雛に給餌する。
6.キジバトのナワバリはMAYR(1935)の分類のB型に属する。
7.繁殖諸仕事の♀♂分担は次のようである。抱卵,抱雛の割合の約70%は♀であり,給餌はその60%が♂である。ナワバリ防衛は90%以上を♂が受けもつ。

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