山階鳥類研究所研究報告
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繁殖期におけるオオジュリンとシマアオジの採食場所について
城殿 博
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1977 年 9 巻 3 号 p. 271-279

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抄録

1.1974年夏,北海道斜里郡小清水町のオホーツク海沿岸に表面上同所的に生息するオオジュリンとシマアオジの採食場所を調査した。調査面積は約11haである。
2.調査地の植生は,牧草地,好湿性植物群落,ハマナスの灌木草原の3つに大別されるが,優占植物の形状によって11のタイプに細分した。
3.調査地にオオジュリンとシマアオジが初めて定着したのは,各々,4月23日,5月6日で13日間の隔たりがあったが,実際の繁殖時期はほぼ一致していた。
4.営巣場所は,オオジュリンがヨシ優占地のBタイプかその近隣であったのに対し,シマアオジはヨシがまばらなCタイプの植生であった。
5.採食した場所の水平分布は,オオジュリンではBタイプの植生に集中する傾向があったが,シマアオジは調査地全体に分散し,低丈草本のEタイプの利用が顕著であった。
6.両種とも採食はほとんど植被のある地上で行なったが,植生別にみると傾向がかなり異なる。すなわち,オオジュリンはBタイプで圧倒的に多く採食(59.5%)した。一方,シマアオジはB,C両タイプで同程度(各々,34.4%,37.4%),オオジュリンではきわめて頻度の低い(2.1%)Eタイプをかなり利用している(12.2%)。
7.植物上での採食も少々みられた(オオジュリン9.7%,シマアオジ5.5%)が,A,B両タイプではオオジュリンのみである。オオジュリンがBタイプのヨシでみせるような上下移動はシマアオジには認められなかった。この採食習性の違いが数字の差となって現われたといえる。

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