抄録
われわれ大学の化学教育を担当する者から見た高等学校の化学教育についての考えを述べてみたいと思う。われわれの研究は天然有機化合物の構造研究であるが, その専門の学問的立場からみても, 高等学校の教育が余り先走って応用的なことばかり教育せずに基礎をしっかり教えることが必要なことはもちろん, 学問的にも片寄ることなく勉強してくることが大切であることを痛切に感じている。将来化学ことに有機化学を専門にやりたい希望をもっているが, 高校ではどんなものに重点をおいて勉強すれば良いかと聞かれた場合, 化学に興味をもっていることは重要であるが, 勉強としては化学に重点をおかずに他のものと同程度の勉強をすること, もしどうしても重点をおくものを考えたいなら数学・物理・語学などをしっかりやるように教示している次第である。大学に入るときには物理をやるつもりだった学生が天然物有機化学をやり非常に優秀な研究者になっている例もある。