1986 年 34 巻 1 号 p. 70-71
日本化学会発行のパンフレット(以下, "手引"と書く)によれば, 従来しばしば"モル数"と呼ばれている物理量(以下, 必要なときは"通常molで量られる物理量"と書く)は"物質の量"と呼ぶのが妥当である, という。いうまでもなく"amount of substance"の訳だが, しかしこの訳語ははなはだ使いにくい。筆者は最近化学計算に関する旧著を書きなおす機会があったが, この言葉を使おうとして使いきれず, 結局"物質量"という言葉を使って切り抜けた経験をもつ。以下, これらの言葉をめぐる筆者の考えを述べ, 大方のご批判を仰ぎたい。