会計史学会年報
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James Montgomeryの原価計算論
小川 華代
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2020 年 2020 巻 39 号 p. 1-15

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抄録

イギリス産業革命期主要産業の1つである綿工業は,短期間で大工場制へと成長した。しかし,綿工業の原価管理の手法については,これまでの研究では不十分であった。そのような中で,本稿では,綿工場の最初の管理書として評価されているが,これまで詳細な研究が行われてこなかったJ. Montgomeryの経営管理書の検討を行った。経営管理書では,これまでの綿工場経営の問題点を整理し,有用な管理手法の提案が行われている。この経営管理書の1番の功績は,イギリス産業革命期当時の,秘密性の高かった内部管理の手法を公開することにより,綿工業全体の発展を促したことである。大工場となった綿工業において,利益の最大化を追求するためには,原材料,製造費用,人材などの管理を正確に行うことが重要である。正確な管理を行うためには,知識が必要であり,J. Montgomeryはその知識の提供を経営管理書によって行った。経営管理書では,特に原価計算の重要性について着目しており,綿工業の特徴を反映させた原価計算の萌芽形態を示している。

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