化石
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横浜市の上総層群から発見された現地性化学合成貝化石群集
間嶋 隆一舘由 紀子柴崎 琢自
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1996 年 61 巻 p. 47-54

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抄録

以上の調査結果から横浜市栄区の化石群集は現地性化学合成群集であると推定できた.したがって, 図3の写真とスケッチは化学合成群集の地下の断面を示す.断面には湧水の基本的な通り道であった生痕起源と思われるパイプ状構造と, そこから拡散した湧水が存在したことを示すコンクリーション部が存在する.さらに湧水はこの場所で断続的に起こり, その結果, 上下二段に, 正月の鏡餅のように重なった貝殻密集層を形成した.日本ではこれまでシロウリガイ類からなる化学合成化石群集が注目されてきた.しかし, 既に述べたようにシロウリガイ類化石は一部の種を除いて自生的な化石の産出が期待できない.一方, Lucinoma, Conchocele, Acharaxなどからなる化学合成化石群集は, その多くが自生的な産状を示すと考えられる.なぜなら, これらの種は深潜没性であり, また安定した泥質の環境に生息することが多いからである.

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© 1996 日本古生物学会
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