火山
Online ISSN : 2189-7182
Print ISSN : 0453-4360
ISSN-L : 0453-4360
西南日本雲仙地域の溶岩/円頂丘溶岩及び崩壊堆積物の熱ルミネッセンス年代
高島 勲渡辺 公一郎
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 39 巻 1 号 p. 1-12

詳細
抄録

雲仙火山は多くの岩体から構成されているが,これまでの研究では,それらは古い方から高岳期,九千部岳期,普賢岳期,有史期の活動により形成されたとする考えが主流をなしている.これらの岩体及び雲仙火山の基底を構成する火山砕屑岩類のうち代表的なものについて合計41個のTL年代測定を行った.その結果,基底を構成する地層の年代は雲仙火山体の南東部が230ka,北西部が180-190kaと地域差を持つことが判明した.火山体の年代は,南部の高岳グループが最も古く,高岩山が270-290ka,絹笠山が240-270ka,高岳が180-220kaとなった.九千部岳グループでは,西側の岩体がやや古く130-190ka,東側の岩体がそれより新しく99-130kaという年代値を示した.現在も活動を続ける普賢岳グループは,周辺部の年代が55-86ka,中心部の妙見岳や普賢岳の年代は15-9.9ka程度となった.また,普賢岳グループの中でも,東側に独立して存在し,活動年代が比較的古いと考えられていた眉山の年代は2.7-3.4kaと非常に若いと推定された.火山体とは別に,周辺部に堆積した基底火山砕屑岩類について6地点,8個のTL年代測定を行った.また,測定した49個について,UとThの関係を検討した結果,本地域の岩石のうち絹笠山のものは低いU,高いThの含有量で,普賢岳・眉山はU,Thとも高い含有量で特徴づけられた.年代と化学組成という2つのデータ反び位置的条件から,絹笠山起源の岩体が細粒化した中に古期普賢岳期の礫を巻き込んでの堆積,九千部岳からの流下,普賢岳からの崩壊物など,各地点の供給源が推定できた.

著者関連情報
© 1994 特定非営利活動法人日本火山学会
前の記事 次の記事
feedback
Top