抄録
中部日本, 諏訪地方に分布する後期鮮新世から前期更新世にかけての膨大な火山岩類は塩嶺火山岩類と呼ばれている.筆者らは塩嶺火山岩類最上部を構成する霧ヶ峰火山の火山岩から2つのK-Ar年代を測定した.既知の層序・年代値と新たに得られた年代値をまとめると霧ヶ峰火山の活動期間はおよそ1.3〜0.75Maである.さらに, 霧ヶ峰火山に覆われる追分火山性地溝帯が主に約0.85Maに形成された可能性が明らかになった.既知の塩嶺火山岩類の研究と今回得られた年代値をあわせると塩嶺火山岩類の主な形成時期は約1.5~0.75Maであり, これは諏訪地方に近接した前期更新世における八ヶ岳火山の活動時期と同じである.つまり, 前期更新世の諏訪・八ヶ岳地域において, 広い地域(800km2)に膨大な体積の噴出物を形成した火山活動がおきたと考えられる.