火山.第2集
Online ISSN : 2433-0590
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九州西部雲仙火山岩類のフィッション・トラック年代
杉山 広己林 正雄藤野 敏雄
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1986 年 31 巻 2 号 p. 85-94

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抄録

九州西部島原半島に分布する雲仙火山岩類のフィッション・トラック年代測定を行い,火山活動史を考察した.年代測定には,ジルコンの外部表面による再エッチ法を用いた.雲仙火山基底の火山砕岩類(竜石層)は0.28±0.05 Maおよび0.25±0.05 Maの年代と標準誤差を示す.高岳グループは0.26〜0.20 Maの間に入り,矢岳0.26±0.04 Ma,高岩山0.24±0.06 Ma,絹笠山0.23±0.08 Ma,高岳0.20±0.05 Maである.九千部岳グループは0.19〜0.17 Maの狭い範囲に集中し,猿葉山0.19±0.03 Ma,吾妻岳0.18±0.06 Ma,九千部岳0.17±0.06 Maである.最も若い普賢岳グループは0.07 Maより若く,肩山0.07±0.02 Ma,普賢岳0.07±0.02 Ma,妙見岳0.06±0.03 Maである.しかし,普賢岳グループのデータは,計数自発トラック数10以下であり,また精密度係数が非常に低いので信頼性に乏しいと思われる.以上のフィッション・トラック年代測定値から,雲仙火山はおよそ30万年前に活動を開始し,引き続き高岳および九千部岳グループの諸火山を形成し.0.17~0.07 Maの休止期間を経て,数万年前に活動を再開し,普賢岳グループの火山を造ったと推定される,なお,雲仙地溝はこの火山活動の休止期間に生成したと考えられる.

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© 1986 特定非営利活動法人日本火山学会
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