火山.第2集
Online ISSN : 2433-0590
ISSN-L : 0453-4360
日本海溝斜面から得られたHornfelsの40Ar-39Ar年代測定
滝上 豊藤田 換太郎
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1989 年 34 巻 3 号 p. 181-188

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抄録

東北久慈沖日本海溝の大陸側斜面壁(北緯40°06´)東経144゜12´より,biotiteを主要構成鉱物とするhornfelsがドレッジにより得られた.このhornfelsの全岩とそれより分離したbiotiteの40Ar-39Arプラトー年代は,それぞれ28.9±1.4 Ma (900-1200℃; 70.6% 39Ar)および28.5±1.4 Ma (800-1100℃; 73.9% 39Ar)である.この年代は,原岩が熱変成によりhornfels化したときの年代と考えられ,約2900万年前にこの地域に熱変成をもたらした大成活動があったことが推定される.この大成活動の要因としては,海洋底プレートが日本列島下にもぐり込むことによって引き起こされた可能性があげられる.しかし現在と同じ状態でのもぐり込みを考えた場合には,その大成活動の位置は現在の海溝軸にあまりにも接近しすぎているようにみえる.そこで,当時はもぐり込む海洋底プレートが現在よりも急角度でもぐり込んでいたか,あるいは海溝軸が日本列島に対してもっと東にあった可能性等を考える必要がある.後者の場合,海溝輔が東から西へ移動する際には,海溝壁のエロージョンが起こっていた可能性がある.

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© 1989 特定非営利活動法人日本火山学会
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