経済分析
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テキスト情報と機械学習を用いた景気動向分析
新谷 元嗣
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2023 年 208 巻 p. 128-145

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抄録

本稿では、テキスト情報を利用して、政府統計よりも速報性の高い景気動向指数を作成する方法と日本経済への応用例を概観する。分析手法に関しては、重要な単語の出現頻度に着目する辞書アプローチと、自然言語処理のモデルをテキストデータから学習する機械学習アプローチの2つに分類して整理する。辞書アプローチの中では、古典的なセンチメント分析が、特に計算や経済学的な解釈の容易性の観点から、現在でも十分有用性が高いと考えられる。ただし、その指数の作成過程では、マクロ経済ドメインに特化した極性辞書の利用やテキストデータの慎重な前処理作業が不可欠である。一方で、純粋な予測精度向上の観点からは、文脈を含めたテキスト情報を有効に反映できる機械学習アプローチが望ましい。今後は、新しい言語モデルの景気動向分析への応用が益々増加することが予想される。同時に言語モデルは近年急速に進化し大規模化しているため、モデルが変更された場合の過去系列の遡及推計や指数の継続性は重要な課題である。

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© 2023 内閣府経済社会総合研究所
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