結核
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血液透析を必要とする肺結核における診療上の問題点
自験14例の検討と全国自治体アンケート調査
冨岡 洋海多田 公英大山 敦嗣藤山 理世大西 尚桜井 稔泰坂本 廣子西口 光山本 剛阪下 哲司白井 千香岩崎 博信
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2003 年 78 巻 4 号 p. 353-358

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抄録

血液透析患者は結核発病のハイリスクグループと考えられているが, 透析可能な結核専門施設は少なく, その対応には問題が多い。当院で経験した症例を検討し, さらに全国自治体86担当部署にアンケート調査を行い, 血液透析を要する肺結核患者の問題点を検討した。過去8年間に当院に入院した活動性肺結核患者1059例 (男/女=773/286) のうち, 慢性腎不全を有し, 血液透析を行った症例は14例 (1.3%) で, うち9例は市外や県外からの依頼であった。平均年齢65±11歳で, 女性が7例と比較的多く, 胸部X線病型分類は1例を除きすべて皿型であった。5例は症状出現または胸部異常影指摘から当院入院まで3カ月以上要していた。全国アンケート調査 (回収率77%) では, 血液透析を要する排菌結核患者の対応に難渋した経験を持つ自治体は31%, 地元にて収容可能な施設がない自治体は25%で, これらの自治体では透析患者に肺結核が発症した場合, 近隣都道府県に依頼する, 透析病院に通院させる, などの対応をとっていた。現状では, 血液透析を要する肺結核患者の対応には難渋する場合が多く, 施設の整備とそのネットワーク構築が急務と考えられた。

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© 日本結核病学会
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