2010 年 45 巻 4 号 p. 243-249
電子顕微鏡像からの生体高分子の構造解析は結晶化の困難な試料に対して有効な手法であるが,得られる構造の分解能はあまり高くないという認識が一般的であった.近年,4~3 Å台の分解能に到達し,アミノ酸側鎖を可視化したという報告がなされてきており,得られた密度マップに基づいて新規構造の原子モデルを直接構築できた例もある.低温電子顕微鏡法では,結晶格子に縛られないより生理的な構造が解析できるだけでなく,今後,分解能の面でもX線結晶回折法に匹敵する手法となっていくものと期待される.本稿では,低温電子顕微鏡法で高分解能構造解析を行うための必要な撮影条件等を解説し,細菌のべん毛繊維や球状ウィルス蛋白質等の解析の実例を紹介する.