2022 年 57 巻 2 号 p. 54-58
球面収差補正STEMでは,収差補正の効果により,分解能だけではなく電流密度が飛躍的に向上したため,原子分解能の構造観察や元素分析が可能になった.しかし,従来であれば気にならなかった電子線ダメージがより顕著に確認される機会が増えてきた.一方,電子線ダメージに弱いサンプルへの観察や分析の需要は増加しており,このような試料の観察や分析にはドーズ量を落とすことが必要である.しかし,これは分析時のS/N比の悪化につながるため,ドーズ量を落とさずにダメージを抑える手法が求められている.我々は,百ナノ秒オーダーでビームをon/off出来る高速静電シャッターを新たに開発した.このシャッターを用いた間欠照射法により,従来と比べて有意に試料への電子線ダメージを抑制した観察,分析に成功した.本稿ではこの実験方法とハードウェアを紹介する.