抄録
細くて,濃い緑が美しく,葉質が柔らかいことと,独特の香りが特徴である高知県産のやっこねぎを用いて,各種無機成分,カルシウム,リン,鉄,ナトリウム,カリウム,マグネシウム,窒素および水分含有量の頻度分布を調べ,分布型を試み,あわせて採取時期,成長別,部位による動向を調べた.ついで主なる元素間の相互関係について検討した.またやっこねぎの消費拡大を願っていくつかの料理を試作し嗜好調査を行った.1.やっこねぎを分析して,各種成分の分布型を決定した結果,カルシウム,リン,カリウム,マグネシウム,窒素および水分は,直接測定値(実数値)において正規分布し,鉄,ナトリウムは対数正規分布を示した. 2.各種成分含有量は,採取時期,成長別,部位によりかなりの変動巾があった.採取時期では,カルシウム,マグネシウムは,夏と秋に多く,ナトリウムは冬と春に多く,カリウムは春と秋に多く含まれている.成長別ではカルシウム,リン,カリウム,マグネシウム,窒素,水分およびビタミンCは,成長とともに減少した.やっこねぎを緑の部分と根を除いた茎の部分にわけて各種成分量を測定した結果,水分は茎のほうに多く含まれたが,対象としたすべての成分は葉の緑色の部分に多く,特に,還元型ビタミンCは,茎の約2倍もの量が葉に含まれていた. 3.各種元素間の相関関係を調べた結果,肥料の3大元素である窒素,リン,カリウムの相関関係は,順調な成長をとげた冬期の試料中に,非常に高い正の相関関係が見られた.秋の試料については,窒素とカリウムの間のみに強い正の相関関係が見られた.成長段階においては,成長中期であるII期にカリウムとリン,窒素とカリウムに正の相関関係が見られた.相助作用があると言われているマグネシウムとリン,拮抗作用があると言われているナトリウムとカルシウムおよびカリウムについては,ナトリウムとカルシウム間のみに全試料間に負の相関関係が見られた.なお部位に関しては,茎よりも生活活性の高い葉の部分に高い相関係数を示した. 4.やっこねぎとわけぎを用いて,一般的な調理操作を施し嗜好調査を行った結果,両者の相違は認められなかった.やっこねぎの好ましい調理方法は,(1)揚げる(2)煮る(3)炒める(4)生(5)蒸すの順であった.やっこねぎを,薬味以外に広く応用,利用するための料理を試みた結果,和え物は勿論のことグラタン,ポタージュに主材料として用いても,十分に好まれる傾向があった.たきこみご飯,ちらしずし,チャーハンへの使用も好評で,またヨーグルトケーキ,サンドケーキへの応用にも高い評価を得た.