スリランカにおける牛ナザーレ住血吸虫(Schistosoma nasale Rao, 1933)による牛ナザーレ住血吸虫症の鼻粘膜を病理組織学的に検討した結果,粘膜内固有層の静脈内に雌雄の成虫が認められた。成虫周囲組織には変化はないが,他の粘膜内には虫卵があり,その周囲には好酸球,好中球,リンパ球,類上皮細胞,多核巨細胞が取り囲み,肉芽腫が形成されていた。また,肉眼的な損傷の重篤さと,その局在性によって,De Bont^<1)>の6タイプと比較し,型分類を行った。その結果,症例Bは,粘膜表層の損傷部位は小さいものの,大量の出血を伴った,通常の炎症反応や肉芽腫形成が認められたので,De BontのIII型に相当すると判断した。症例Cは,強い炎症反応と多数の肉芽腫形成が見られることから,IV型と判定した。また,症例Dは,隆起性病変,広範囲な表層粘膜上皮の欠損,潰瘍形成,激しい炎症反応,静脈内での欝血と血管拡張などが観察されたことから,V型に分類できるとおもわれた。今回我々が検索した組織は,自然感染例であるので経時的変化は観察できなかったが,組織像の違いや浸潤している細胞の種類等から感染時期や産卵時期について推察することができた。