2012 年 42 巻 p. 1-12
本研究は、幼児期の道徳性と客観的状況理解との関係、およびその関係の性差や発達差を検討したものである。道徳性は善悪の判断に関するもので、動機論的判断と結果論的判断に分類された。加えて、客観的状況理解は自己の誤信念、他児の信念、他児の願望から構成されたものであった。調査参加者は44名の4歳児と33名の5歳児からなる合計77名の幼稚園児であった。本研究は個別面接法で実施され、以下の結果が得られた。4歳女児において、動機論的判断の傾向が強い子どもは、結果論的判断の傾向が強い子どもに比べると、他者の願望を不当に意地悪と捉えていた。他方、4歳男児や5歳児では道徳性による願望の違いは見られなかった。さらに、誤信念や信念においても、道徳性による違いは見られなかった。以上のことから、4歳女児において道徳性の発達が他児の願望の理解に影響を及ぼす要因であることが示唆された。