科学基礎論研究
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理論の発展と完成としての自滅の過程
唐木田 健一
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1983 年 16 巻 3 号 p. 17-21

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抄録

我々は主として量子論の発生と展開を対象とし, 理論変化の過程を考察した。我々の結論は次のようにまとめることができる : 自然科学における基本理論の変化とは,
(1) 伝統的理論に対抗して新理論が出現し, それが何らかの事情で多数派を形成してゆき旧理論が廃棄されるという過程ではなく,
(2) 伝統的理論が《自滅》していく過程であること。
イ) ここにおける自滅とは理論内部の矛盾に基づくものであり,
ロ) 理論の外から, すなわち競合する理論あるいは伝統的理論を反証する実験事実によって, もたらされたものではないこと。
(3) 理論は自滅によって完成される (すなわち限界づけられる) こと。
(4) 理論の自滅の過程は同時に新理論の誕生と確立の過程とも呼ばれること。

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