科学基礎論研究
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心理学における概念構成 II
考察
岩原 信九郎
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1958 年 4 巻 1 号 p. 24-31

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抄録

以上, 介入変数 (IV) と仮定的構成体 (HC) に関する主な研究をとりあげ, その要点を述べ, これに関する論争の生じた原因の一つが用語上のものであることを指摘した. そして何れも刺激Sと反応Rの間に介入する媒介概念 (MV) であり, SMV, MVRの間には因果関係のあることを述べた. 一般にIVは解析的であるか, 便宜的であると考えられているがこれは心理学においてIVといわれる概念には妥当しない. 即ちSIVの間には常に因果性を予想し, 仮定的因子を含んでいるという意味でHCと本質的に異なるものとはいえない. 勿論IVHCより操作水準が高いとはいえようが, この事はIVHCより科学性が高いことにもまたHCが純化されてIVになることをも示さない. 何故ならかゝる意味でのHCは予言性の高い点ではIVと比べるべくもなく, またHCが証明され直接観察されれば既にIVではなくなってしまう. またHCを生理的概念とのみ考えることも正しくない. かゝる見地は心理学の生理学への還元を意味するものであって事実と必らずしも一致しない. 仮定的なMVとしては生理的なもののみでなく行動的なものもある. 然し行動的なものに実在性がないという批判があるがこれは実在性の理解をあやまっているものといえよう. 真か偽かいえるものはすべて実在性があるとみなければならず, 直接観察 (時空的定位) のみが実在性の根拠にはならない.
行動的であれ, 生理的であれ, MVはつねに直接観察しうるSRの両方に足場をもたねば科学的概念とはいえない. 然しゲシタルト心理学, 特にLewinの理論ではMVSへの足がかりが明らかにされていない欠点がある. 勿論S自身もRと無関係でないばかりかRによって規定されるが, それはRMVの函数であるという時の因果性でなく, 概念的定義の問題にすぎず, またR=f (S) が適用される場合のRとは独立に規定されるからSMVとは厳密に区別されねばならない.

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