2022 年 20 巻 p. 5-15
新型コロナウイルス感染症が収束しないなか,北九州市立自然史・歴史博物館において,移動壁や背丈の高い展示ケースの使用を極力さけ,展示コーナーを可能な限り離して配置するとともに各コーナーを4方向から見ることができるようにすることで,観覧者の滞留を防ぐことを目的とした島状展示を導入した特別展を実施した.観覧者へのアンケートの結果から,この展示手法は観覧者の滞留を抑える効果があったものと考えられた.また,島状展示に,読みやすくわかりやすい文章を記した解説パネルを組み合わせたことで,観覧者に展示の意図を伝えやすくできることや観覧者の展示に対する総合的な満足度を高めることができると考えられた.一方,展示コーナー周辺での観覧者の混雑をより軽減するためには,当該コーナーと離れた場所でも来館者の持参した携帯端末を用いて展示解説を読むことのできるシステムの導入が効果的であると判断された.しかし,今回採用した当該システムの利用率は低く,このようなシステムをより利用しやすくするためのさらなる方策が必要であると考えられた.さらに,今回の特別展と異なり,コーナー間の関連性・ストーリー性がより強い構成の特別展の場合,島状展示における展示意図の伝達効果がどの程度あるのかなど,さらなる検討が必要であると判断された.