2013 年 2 巻 p. 38-42
欲求伝達時には大きな声で発話することができるものの,日常会話は失声になってしまう患者に対し,発語行動に身体接触を随伴させる行動分析学的介入を行った.「ベースライン条件」では,復唱を求め有声音で発声できた場合,言語による賞賛のみを行った.「身体接触条件」では,復唱を求め有声音で発声できた場合,言語による賞賛と身体接触による賞賛を行った.そしてABAB法によって,これらの条件の効果を検討した.その結果,身体接触条件では,復唱可能になった文節数の増加,言語聴覚療法に対する拒否的言動数の減少などを認めた.また,日常生活でも失声状態が改善した.介入前後の身体機能,認知機能に変化はなかった.身体接触を用いた介入は,本症例の発語行動を増加させる上で効果的であったと考えられた.適切な発語行動を生起,発生頻度を増価させるうえでは,言語による賞賛のみに比べ,身体接触が有効であると考えられた.