抄録
今回,入院前より起居・移乗動作に介助を要した重度認知症を合併する右大腿骨転子部骨折患者を経験した.先行研究でその有用性が報告されてきた段階的難易度設定と逆方向連鎖化の技法を用いた動作練習方法を適応し,その効果について検証した.起居・移乗動作をそれぞれ4段階に分け,第1段階から第4段階に向かって順に訓練を実施した.訓練課題が成功した場合は,即時的に注目・称賛を与えた.起居動作は計12セッションで,移乗動作は,計7セッションで第4段階に成功し,見守り~口頭指示で動作が可能となった.本介入中には,明らかな機能障害の変化はなかった.入院前に介助を要していた起居・移乗動作が短期間で可能となったことから今回の動作訓練は有効に機能したものと考えられた.