抄録
カブトムシ(Trypoxylus dichotomus)は広く東南アジアから日本にかけて生息し,名義タイプ亜種の他8 亜種が報告されているが,屋久島および種子島産を入手して外部形態を比較検討した結果,以下のように既知のいずれの亜種とも異なる特徴を有する個体群であると判断された.体は赤味を帯びるものが多く出現し,光沢がやや強い.平均して小型で,横幅がある.前胸はやや短く,側縁は中央で緩やかに曲がり丸みを帯びる.腹面の剛毛は少なく,短いなどの違いがある.また,隣接する地域に生息するT. d. septentrionalis と比較して雄は頭の角の扇状のつくりが小さく,柄は短い.前胸の角は前方に向かって発達する.雌の前胸のY字の溝がやや浅い.エリトラの剛毛は接合部付近で少ない.T. d. tsuchiyai と似るが体は細く,光沢が弱い.雄は頭の角の柄が比較的長く発達する.雌はエリトラの剛毛が側縁付近で多いなどの違いがある.よって屋久島および種子島産を新亜種カブトムシ屋久島・種子島亜種Trypoxylus dichotomus shizuae, subsup. nov. とした.学名は著者の母,阿達シズに因んだものである.種子島北部地域から得られた雄には比較的頭部の角の柄が長く発達するものがみられるが,中~南部の個体群と同様に扇状のつくりが小さい (Fig. 2, 61).雌は地域によって違いがないことから屋久島・種子島亜種に含まれるものと判断した.